ビタミンDと消化器がん予防

前回ご紹介したセミナーの一つのテーマが、「 ビタミンDとがん予防」でした。講師はビタミンDの研究では、世界的に著名な東京慈恵会医科大学教授の浦島充佳先生にお願いしました。

ビタミンDの効用については、こちらのブログでも度々ご紹介していますが、米国ではビタミンDが大腸がんを予防する可能性について10年以上前から議論されてきています。それは米国の疫学調査にて緯度の高い地域に大腸がんの発症率が高いことが知られていたためです。

ボストンなど米国の中でも緯度が高い地域は10月から気温とともに、日照時間が急激に減少します。その結果体内のビタミンD濃度も低下している事実があります。これらのことからビタミンDと大腸がんとの関係について研究が進められました。

培養細胞や実験動物を使った試験では、ビタミンDに発がん予防の働きがあることがほぼ確認されています。しかし人間を対象とした実際の臨床ではどうなのか、これまで大規模な研究が行われていませんでした。そこで浦島先生たちのグループは、消化器系のがんを罹患した患者を対象に、ビタミンD (一日2000IU)を5年間摂取した場合、がんの再発予防効果があるか否かについて臨床試験を開始しました。

ちなみにこのプロジェクトは、ビタミンDが日光浴によって増えることから、太陽神である天照大神の名前をとり、AMATERASU Projectと命名されています。その結論が今年の4月に論文に発表されています。

論文のサマリーの結論の部分だけを見ると、ビタミンDにはがん再発予防効果なしと書いてあります。しかし本文をよく見ると、臨床試験開始時に平均的なビタミンD濃度である20~40 ng/mlを維持していた患者群では、消化器系のがんの再発率が大幅に減少していたことが明らかにされています。今回の浦島先生のご講演では、論文掲載までの紆余曲折があった裏話など貴重なお話を伺うことができました。

ビタミンDにはがんを予防する効果が確かにありそうです。
日照時間の短くなるこの時期は積極的にビタミンDの補充を行いましょう。

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