最新研究が示す心臓病予防の可能性
「トマトは体に良い」とよく言われますが、その理由の一つがリコピンです。リコピンはトマトやスイカ、ピンクグレープフルーツなどに含まれる赤い色素(カロテノイド)の一種で、強い抗酸化作用を持つことが知られています。最近では、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患を予防する可能性にも注目が集まっています。
最新の研究では、リコピンを多く摂取している人は、摂取量の少ない人に比べて心血管疾患の発症リスクが14%、脳卒中が26%、総死亡率が37%低いことが報告されました。もちろん、これは観察研究であり因果関係を証明したものではありませんが、多くの研究をまとめたメタ解析で示された結果であり、非常に興味深いデータです。
その理由として重要なのが、血管内皮機能の改善です。血管の内側を覆う「血管内皮」は、血管を広げたり縮めたりする働きを担っています。この機能が低下すると動脈硬化が進みやすくなります。2025年に行われた臨床試験では、リコピンを豊富に含むトマトジュースを12週間飲んだ人では、血管内皮機能(Flow-Mediated Dilation:FMD)が有意に改善し、高リコピン群では正常に近いレベルまで回復しました。
リコピンには、血管を守る働きがいくつもあります。
- 活性酸素を抑える抗酸化作用
- 慢性炎症を抑える抗炎症作用
- 糖とタンパク質が結びついて老化を促進する**糖化(AGEs)**を抑える作用
- LDLコレステロールや血圧の改善
- 動脈硬化の進行抑制
さらに、酸化ストレスの指標である**マロンジアルデヒド(MDA)**を低下させることも報告されており、体全体の酸化ダメージを軽減する可能性があります。
では、どのように摂取すればよいのでしょうか。リコピンは加熱したトマト製品の方が吸収されやすいことが知られています。トマトジュースやトマトソース、トマトペーストなどは効率的な摂取源です。また、オリーブオイルなどの油と一緒に摂ると吸収率がさらに高まります。
アンチエイジング医学の視点
血管は「人は血管とともに老いる」と言われるほど、健康寿命を左右する重要な臓器です。リコピンは単なる抗酸化成分ではなく、血管内皮機能を改善し、酸化・炎症・糖化という老化の三大要因に働きかける栄養素として注目されています。
毎日の食生活にトマトやトマトジュースを取り入れることは、将来の心筋梗塞や脳卒中のリスク低下につながる可能性があります。ただし、現時点では「リコピンだけで心血管疾患を予防できる」と結論づける段階ではありません。禁煙、適度な運動、血圧・血糖・脂質の管理と組み合わせることで、より大きな健康効果が期待できるでしょう。
参考文献
- Nam YE, Hwang IG, Jang HH. Role of lycopene from tomato on cardiovascular risk: an umbrella review of systematic reviews and meta-analyses of intervention studies. Food Funct. 2026;17(2):622-630. doi:10.1039/D5FO04213E.
- Yoshida K, Nakazawa Y, Takahashi S, Suzuki S. Improvement of vascular endothelial function by intake of lycopene-rich tomato juice in healthy adults: a randomized, placebo-controlled, double-blind, parallel-group comparative study. Food Funct. 2025;16:7812-7822. doi:10.1039/D5FO01397F.
- Tierney AC, Rumble CE, Billings LM, George ES. Effect of Dietary and Supplemental Lycopene on Cardiovascular Risk Factors: A Systematic Review and Meta-Analysis. Adv Nutr. 2020;11(6):1453-1488. doi:10.1093/advances/nmaa069.

