私たちの身の回りには、多くのプラスチック製品があります。食品容器、ペットボトル、化粧品、レシートなど、日常生活のさまざまな場面でプラスチック由来の化学物質に接しています。
近年、こうした化学物質の中でも「フタル酸エステル」や「ビスフェノールA(BPA)」と呼ばれる可塑剤が健康に与える影響が注目されています。可塑剤とは、プラスチックを柔らかくしたり加工しやすくしたりするために使われる化学物質です。
2025年に医学誌『Lancet Planetary Health』に発表された研究では、米国の成人8,378人を平均8.5年間追跡調査しました。その結果、尿中の可塑剤濃度が高い人ほど、心血管疾患やがん、そして総死亡のリスクが高いことが明らかになりました。
しかし、さらに興味深い結果がありました。可塑剤と死亡リスクの関連が認められたのは、血中ビタミンD濃度や赤血球葉酸濃度が低い人だけだったのです。逆に、ビタミンDや葉酸が十分な人では、可塑剤による死亡リスクの上昇は認められませんでした。
もちろん、この研究だけで「ビタミンDや葉酸を摂ればプラスチックの害を防げる」と結論づけることはできません。しかし、栄養状態が良好であることが、環境中の有害物質から体を守る力を高める可能性を示した重要な研究といえるでしょう。
ビタミンDは日光を浴びることで体内で作られますが、現代人の多くは不足しているといわれています。また葉酸は緑黄色野菜や豆類に多く含まれています。
健康を守るためには、プラスチック容器の過度な使用を避けることも大切ですが、それと同時に栄養状態を整えることも重要です。特にビタミンDや葉酸は、免疫機能や細胞の修復、遺伝子の働きにも関与する重要な栄養素です。
環境中の有害物質を完全に避けることは難しい時代です。しかし、「曝露を減らす努力」と「体の防御力を高める栄養管理」の両方を行うことで、健康への影響を最小限に抑えられる可能性があります。
今回の研究は、「何を避けるか」だけでなく、「何を十分に摂るか」が健康長寿にとって重要であることを改めて教えてくれています。
Plasticisers chemical mixture, vitamin status, and mortality in US adults: a prospective population-based cohort. Lancet Planet Health. 2025 Dec;9(12):101394.

