低コレステロールと脳内出血

コレステロール値を下げるべきか否か。医学会の中でも大きく意見が分かれています。心臓血管疾患を扱う循環器の先生方はコレステロールを下げるべきと考え、栄養代謝が専門の脂質学会では、不用意にコレステロール値を下げることに対して警鐘を鳴らしています。

私自身は、必要以上に下げる必要はないと考えています。 米国から発表された最新情報では、悪玉コレステロール (LDL)値が 70 mg/dl 未満になると脳出血のリスクが 高まると述べられています。この研究は、約96,000名を9年間ほど追跡調査し、血液検査を毎年行い、コレステロール値の変化と疾病との関係を調べています。

その結果、LDL値が70~99 mg/dlでは脳出血のリスクはほぼ変化ありませんでしたが、LDL値が70 mg/dlを下回ると脳内出血のリスクが上昇し、さらにLDL値が50 mg/dl未満では、脳内出血のリスクが169%も増加したということです。

米国のLDL値の基準値は、100 ~ 190 mg/dl ですが、なぜか日本の基準値は 100 ~ 140 mg/dlです。心筋梗塞などの既往歴などがあると、LDL値は厳しく管理されることになり、日本では 100  mg/dlを超えないように医薬品が処方されることになります。

スタチン系と呼ばれるコレステロール降下剤を服用すると、信じられないほどコレステロール値が下がります。そのため定期的に血液検査をしていないと、想定以上にLDLが下がり過ぎてしまうことが多々あります。当院の外来でも、他院から処方されたスタチン系製剤を服用している患者様で、LDL値が50 mg/dlに満たない方が来院されたことがありました。

コレステロールは細胞膜や脳神経細胞を作るための重要な栄養素です。本論文でも指摘されているように、必要以上にコレステロールを下げることは、生命のリスクを高める結果になるので注意が必要です。

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