私たちの年齢には、誕生日から数える「暦年齢」と、細胞や組織が実際にどの程度老化しているかを示す「生物学的年齢」があります。同じ70歳でも、体の中では若々しい人もいれば、老化が速く進んでいる人もいます。最近、この生物学的な老化にビタミンDが関係している可能性が注目されています。
生物学的年齢を調べる方法の一つが「エピジェネティック・クロック」です。DNAそのものの配列は年齢によって大きく変わりませんが、DNAに付く「メチル基」という化学的な目印は加齢とともに変化します。このDNAメチル化のパターンから、体の老化の進み具合を推定することができます。
高齢者1,036人を平均7.4年間追跡した研究では、ビタミンDが不足していた人のうち、途中からビタミンDを補充した人は、補充しなかった人よりもエピジェネティックな老化の進行が遅いことがわかりました。測定方法によって差はありますが、生物学的年齢で約1.3~2.6年の違いが認められています。
一方で、「ビタミンDを飲めば若返る」と単純に考えることはできません。70歳以上の777人を対象とした別の研究では、ビタミンDを1日2,000IU、3年間摂取しても、ビタミンD単独では明確な老化抑制効果は認められませんでした。しかし、オメガ3脂肪酸や運動を組み合わせることで、老化を遅らせる効果がより期待できる可能性が示されています。
さらに興味深いのが「テロメア」です。テロメアは染色体の末端を守る構造で、細胞分裂を繰り返すたびに短くなるため、「細胞の寿命を示す時計」とも呼ばれます。大規模なVITAL試験では、ビタミンD3を1日2,000IU、4年間摂取した人では、プラセボ群よりテロメアの短縮が抑えられていました。
現在の研究から特に大切なのは、ビタミンDを大量に摂ることではなく、不足している状態を放置しないことだと考えられます。健康的に年齢を重ねるためには、ビタミンDだけに頼るのではなく、適度な運動、バランスのよい食事、オメガ3脂肪酸なども含めた総合的な生活習慣が重要です。何歳か」だけでなく、「どのように年を重ねているか」。これからの健康管理では、そんな視点がますます重要になってくるでしょう。
参考文献
- Vetter VM, et al. Vitamin D supplementation is associated with slower epigenetic aging. GeroScience. 2022;44:1847–1859.
doi: 10.1007/s11357-022-00581-9 - Bischoff-Ferrari HA, et al. Individual and additive effects of vitamin D, omega-3 and exercise on DNA methylation clocks of biological aging in older adults from the DO-HEALTH trial. Nature Aging. 2025;5:376–385.
doi: 10.1038/s43587-024-00793-y - Zhu H, Manson JE, Cook NR, et al. Vitamin D3 and marine ω-3 fatty acids supplementation and leukocyte telomere length: 4-year findings from the VITamin D and OmegA-3 TriaL (VITAL) randomized controlled trial. American Journal of Clinical Nutrition. 2025;122(1):39–47.
doi: 10.1016/j.ajcnut.2025.05.003

