亜鉛と糖尿病

亜鉛は9種ある必須ミネラルの一つです。その働きは細胞分裂の際に欠かすことのできない役割があるため、ほぼ全身の細胞の機能を助けているミネラルです。臓器別に見ると、前立腺や眼球に亜鉛は多く含まれていますが、次に亜鉛が多く存在する臓器が膵臓です。お気づきのように、糖尿病患者にとって重要な働きをする膵臓を陰で支えているミネラルが亜鉛です。

最新の研究では、糖尿病患者に対して亜鉛を投与すると、どのような効果があるのかを検証しています。この研究は、19本の論文を解析したメタアナリシスによるものですが、対象患者は1357人の糖尿病患者について調べています。亜鉛を投与した結果、中性脂肪、総コレステロール、LDLコレステロール値が有意に低下、反対に善玉コレステロールであるHDLが有意に上昇していました。また身長と体重から算出されるBMI値にも減少がみられました。

血中亜鉛濃度は加齢とともに減少する傾向があります。70歳を超えると男女ともに、至適濃度とされる80 mg/dL を下回る傾向が見られます。高齢者によく見られる眼科的疾患や皮膚のトラブルの原因にはこうした亜鉛低下がある場合があります。加齢に伴い亜鉛が減少する原因については、消化吸収の問題、摂取する食品の全量の低下などが指摘されていますが、正しい理由についてはわかっていません。

亜鉛を多く含む食品は、蠣などの貝類や海藻、ナッツ類になりますが、1日の必要量とされる15mgをこれらの食材だけから補給することは容易なことではありません。このため当院では血液濃度を確認しながら適切な量の亜鉛をサプリメントで摂取することをお勧めしています。

亜鉛の過剰摂取の副作用には、食欲低下や銅の減少による貧血がありますが、臨床的には極めて稀な現象です。血中亜鉛濃度を確認することは、保険適応になっている検査ですので、是非かかりつけの医師にお願いしてご自身の亜鉛レベルを確認されてください。

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