前回に引き続き、セミナー内容のダイジェストをお届けします。今年の講師の先生方とそれぞれの講演内容は、下記のようになっていました。(順不同、敬称略)
- Terry Grossman … Grossman Wellness Center..“Repurposing existing prescription drugs for longevity”
- 坪田一男… 株式会社坪田ラボ … ヘルスサイエンスからビジネスを創る!
- 山岸昌一… 昭和大学医学部教授 … 終末糖化産物(AGE)を標的とした抗加齢医療
- 岡田正彦… 新潟大学名誉教授 … 新型コロナの今後とワクチンの問題点
- 東浩太郎… 東京大学老年病科講師 … アンチエイジングにおけるビタミンKの新たな役割
岡田正彦先生(新潟大学名誉教授)からは、COVID-19感染症とワクチンについてのお話をしていただきました。過去3年間は新型コロナウィルス感染症に、社会全体が振り回されてきたわけですが、そろそろこの感染症との戦いも終わりが見えてきたように思われます。一方では、日本人の月別死亡者数は過去3年増加傾向にあり(下図参照)、2021年の平均寿命はついに前年よりも短くなってしまっています。
2021年から接種が始まった、mRNAを利用したコロナワクチンの効果と安全性については、専門家の間でも様々な議論が交わされています。しかし、一向に結論が見えないところが、現代医科学の限界を感じさせるものでもありました。岡田先生からはこの点について、的確なご意見を伺えたことは、臨床医として今後の立ち位置を考える上で大いに参考となりました。岡田先生のご意見はご自身のブログに詳しくまとめられておられます。是非ともご一読をお勧めします。
東浩太郎先生(東京大学老年病医学)からは、ビタミンKについての最新情報についてお話しいただきました。ビタミンKという名称は、ビタミンK1からK5までの総称であり、このうち天然に存在するものは、ビタミンK1とK2とされています。ビタミンK1は緑黄色野菜に含まれる成分で、体内で変化し活性型のK2となります。一方ビタミンK2は、メナキノンとも呼ばれ、その構造から数種類に分類されますが、納豆やチーズなどの発酵食品から摂取することもできます。
ビタミンKの主要な働きは、血液凝固機能を維持することと、骨や動脈壁の過剰石灰化を防ぐことにあります。興味深いデータとして、骨粗鬆症の結果でもある大腿骨骨折の頻度について調べた疫学調査では、関西圏よりも関東圏で骨折頻度が少なかったという結果が出ています。これは納豆を食べる習慣のある地域分布と一致するのではないかと考えられています。また近年の研究では、ビタミンKの持つ抗がん作用も注目されており、今後の研究成果が期待されています。
医家向けのセミナーとして、年に一回のペースで続けているセミナーですが、最新の医療情報を学ぶ機会として今後も続けられるよう努めてまいります。