緑茶とCOVID-19

新緑の季節は、新茶の美味しい季節でもあります。日本人として生まれてありがたいと感じることの一つに、お茶を楽しむ習慣があるということです。お茶の健康効果については、日本最古の医書である「医心方」にすでに記載されています。医心方は984年に丹波康頼によって朝廷へ献上されていますので、平安時代には薬としての効能が知られていたようです。

近年の研究では、緑茶や緑茶に含まれる薬効成分であるエピガロカテキンガレート(EGCG)に、新型コロナウィルス感染を防ぐ働きがあることが、数々の研究で明らかにされています。昨年の夏に発表された研究論文では、緑茶を飲むことやEGCGそのものに、新型コロナウィルス感染予防だけでなく、その変異種に対しても予防効果があることが報告されています。

この研究では、緑茶に含まれる4つのカテキンについて調べていますが、その中ではEGCGが最も強い抗ウィルス作用を示したことが、基礎研究によって明らかにされています。中でもウィルスに感染する前に、細胞をEGCGに浸しておくと、より強い感染予防効果を示したということでした。他の研究では、EGCGがCOVID-19感染を防ぐメカニズムとして、スパイクタンパク質が細胞表面に接着するプロセスを妨害するためではないかと推測しています。

こうした基礎研究を背景として、人間を対象とした緑茶のCOVID-19感染予防についての臨床試験も行われています。この研究は日本の研究機関で行われたもので、約2600名の医療従事者を対象としています。血液中の抗体検査またはPCR検査で陽性者をCOVID-19感染者と定義し、質問票で確認した緑茶摂取量との関係について調べています。その結果、緑茶を1日あたり4杯以上飲む人では、1杯も飲まない人と比較してCOVID-19感染率がほぼ半分に減少していたことが確認されています。

薬として伝わった「茶」は、日本人の食習慣の一部として溶け込んでいるだけでなく、茶道という一つの文化にまで昇華されています。日本人として、またコロナ感染対策の一つとして、緑茶を飲むことは大いに意義のあることだと考えます。

クリニック隣接の公園にて
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