発酵食品の効能

腸内細菌叢の解析技術が進んだこともあり、発酵食品の効能については広く知られるようになってきました。つい先日、米国のスタンフォード大学から発表されたレポートでは、発酵食品を食べ続けることで、腸内細菌の種類が増えるだけでなく、全身の炎症性マーカーの減少が見られたことが報告されています。

この研究では、36名の健常人を対象に、10週間にわたり発酵食品を摂る群と食物繊維を多く摂る群に分けて、腸内細菌叢の変化について調べています。発酵食品群が摂取した発酵食品は下記のようなものです。

  • ヨーグルト、ケフィア
  • カッテージチーズ
  • キムチ、発酵野菜、塩漬け野菜飲料
  • Kombucha tea *

(* 上記の発酵食品リストにある Kombucha tea とは、昆布茶のことではなく、一昔前にブームになった紅茶キノコのことです。)

その結果、発酵食品摂取群でのみ腸内細菌の種類が増加したことが確認されました。さらに4種類の炎症性細胞の活性や19種類の炎症性マーカーが、発酵食品群では低下していたことがわかりました。対象的に、食物繊維が豊富な食事だけをとった群では、腸内細菌叢の種類の増加や炎症性マーカーの減少などは見られませんでした。

日本人にとって幸運であることは、日本という国が、1000種を超える発酵食品に恵まれた世界で唯一の国であるということです。日本酒作りに欠かすことのできない糀菌は日本にしか存在していない貴重なものです。納豆菌は食品類の中で最も増殖力が強い細菌として知られています。さらに納豆菌の存在は乳酸菌の働きを強めることも知られています。つまり、細菌同士が共存共栄をはかっているのが自然界の仕組みです。日本人として発酵食品の恩恵に感謝せざるを得ません。

動脈硬化、発がん、認知症、など現代人の死因となる深刻な病態を作り出す原因は、慢性的な炎症と言われています。発酵食品を毎日補充することで、腸内細菌叢の多様性を維持し、炎症を抑制することが、健康長寿につながる大切な習慣です。

https://doi.org/10.1016/j.cell.2021.06.019
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