制酸剤で胃がんリスク上昇

制酸剤の一つであるプロトンポンプ阻害薬(PPI)の長期間服用のリスクがネット上で話題になっています。PPIをヘリコバクターピロリ(HP)除菌後に長期間服用すると、胃がんになるリスクが2倍以上も高くなることが医学雑誌に報告されました。

これは香港大学の研究機関が行なった研究で、成人約6万人のデータを解析し、HP除菌後のPPI服用と胃がん発症リスクについて調べた結果わかった事実です。

この論文によれば、PPIを毎日服用している場合には、胃がんになるリスクが4.6倍になり、さらに1年以上連日服用すると、そのリスクは、PPIを服用していない人と比較して5.0倍に、2年以上では6.6倍に、3年以上では8.3倍にと、うなぎのぼりで増えている結果が確認されています。

一方、H2ブロッカーと呼ばれる種類の制酸剤では、胃がんを増やす傾向は見られませんでした。 HP菌は、慢性胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍、さらには胃がんの原因菌として除菌することが勧められています。

しかしHP菌を除菌すると、今度は胃酸の分泌量が増えてしまい、逆流性食道炎などの不快な症状を起こしやすくなることも指摘されています。このためHP除菌後に、制酸剤であるPPIが長期間にわたり投与される傾向が、我が国の医療でも多く見られています。

PPIの長期間投与のリスクについては、本ブログでも以前にお伝えしていますが、まさか胃がんのリスクまで増えることになるとは驚きです。 生命体は微生物との共生関係によって生かされています。人間も同様であり、人体の細胞の数以上の微生物とともに生きていることが、近年の研究で明らかにされています。

健康体とは、これらの微生物との共生関係がバランスよく保持されている状態であり、病気とはバランスが崩れた状態です。HP除菌も必要な場合には行うべきですが、除菌によるリスクも起こりうることを理解する必要があります。

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