脳に光りを

目覚めたときに、すがすがしい朝陽を浴びると、何となく元気になるものです。反対に、どんよりした曇天の朝は、元気を出すのが大変だと感ずる方も多いのではないでしょうか。なぜこのような心理的な反応が起きるのか、科学はこのメカニズムを解明しようとしています。

ノーベル医学生理学賞受賞者で、理化学研究所の利根川進博士らの研究チームは、うつ状態にしたマウスの脳細胞を光で刺激して「楽しかった記憶」を人為的によみがえらせ、うつを改善する実験に成功したということです。この論文は、2014年6月17日付の英科学誌ネイチャーに掲載されました。

脳細胞に光りを届けるのは目しかないと思いがちですが、実は頭蓋骨からも、うっすらと透過光が大脳表面に届いているようです。そして大脳表面には、かすかな光刺激を感知する細胞があることもわかってきました。

こうした中でフィンランドで開発されたものが、耳から光を入れる「Vulkee(バルケー)」という製品です。 この製品を、起床後1時間以内に12分間使用すると、約14~15時間後にメラトニンの分泌が起こりやすくなります。メラトニンは睡眠を誘導するホルモンの一種ですので、バルケーを使うことは不眠症対策になります。本来は時差呆け予防や不眠症対策で開発された「バルケー」ですが、近年では「うつ病」対策としても有効ではないかと考えられています。

前述した利根川先生の研究成果は、「バルケー」の可能性を後押しするものになりそうです。耳から光をいれるという、まさにこれまでの常識を覆すような装置ですが、時差呆け予防や治療には、効果的との評判です。脳細胞の機能と光との間には深い関係がありそうです。

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