フレイルを予防するための食事とは

高齢者の健康を語る上で欠かせないキーワードのひとつに「フレイル」があります。フレイルとは、加齢に伴って筋力や活力が低下し、要介護状態へとつながりやすくなる中間的な段階を指します。地域で生活する高齢者の約10〜15%に見られるとされ、いかに防ぐかが大きな課題です。

近年の研究では、フレイルの背景に「慢性的な炎症」が深く関わっていることが明らかになってきました。では、その炎症を私たちはどうコントロールできるのでしょうか。ヒントの一つは「食事」にあります。

米国で行われたフラミンガム心臓研究(Framingham Heart Study)の参加者を対象とした調査では、約12年間にわたり1700人以上を追跡し、食事とフレイル発症の関係を検討しました。食事の「炎症性の強さ」を示す指標(E-DII®スコア)を算出し、その数値が高い、つまり炎症を引き起こしやすい食事をしている人ほど、フレイルになる確率が高いことが分かったのです。

具体的には、炎症性の食事スコアが高いグループは、低いグループと比べてフレイル発症のリスクが2倍以上に増えていました。これは年齢や生活習慣などの要因を考慮してもなお明らかな差でした。一方で、血液中の炎症マーカー(IL-6やCRP)は大きな媒介とはならなかったことから、食事そのものの影響が強いことが示唆されます。

では、炎症を抑える食事とはどのようなものでしょうか。一般的には、野菜や果物、魚、全粒穀物、オリーブオイルなどを多く含む「地中海食」や、日本の伝統的な和食が抗炎症的とされています。逆に、加工食品や砂糖の多い食品、飽和脂肪酸を多く含む食事は炎症を促進すると考えられています。

この研究は「抗炎症的な食事がフレイル予防につながる可能性」を科学的に裏付けるものです。つまり、私たちの日々の食卓の選択が、将来の健康寿命に直結しているといえるでしょう。

フレイルを遠ざけるために、まずは一日一食からでも「野菜を増やす」「魚を選ぶ」「加工食品を減らす」といった工夫を始めてみてはいかがでしょうか。

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