リチウムというと薬のイメージがありますが、近年、ごく微量のリチウムを日常的に摂取することが認知症予防につながる可能性が注目されています。リチウムは水や野菜にもわずかに含まれますが、実は私たちの食卓にもっと身近な“豊富な供給源”があります。それが 片口イワシの骨 です。
リチウムは海水由来のミネラルで、小魚は海で一生を過ごすため蓄積しやすく、特に骨に多く含まれます。さらに煮干しやいりこなどの乾燥食品では、栄養が濃縮されるため、100g中に数 mgのリチウムが含まれることもあります。煮干しを5〜10g食べたり、いりこ出汁を使うだけでも、研究で示されている“微量リチウム(1日300〜2000 μg)”の摂取に近づくことができます。
なぜリチウムが注目されているのでしょうか。2025年の大規模研究では、アルツハイマー病や軽度認知障害で亡くなった方の脳を調べたところ、リチウムだけが有意に低かったことが判明しました。またリチウム欠乏食のマウスでは、アミロイド斑やリン酸化タウが増え、記憶障害が進行。まさに“アルツハイマー様の変化”が誘発されたのです。
一方、微量のリチウムを補ったマウスでは、記憶力の改善、アミロイド蓄積の減少、脳の炎症の軽減が確認されました。
この効果の大きな鍵は GSK-3 という酵素です。GSK-3が過剰になると、脳の老化や認知症に典型的な変化が進行します。リチウムにはこの酵素を抑える作用があり、脳の健康維持に役立つ可能性があります。
サプリメントもありますが、日本人にとっては昔ながらの小魚を骨ごと食べる習慣が、最も自然で理にかなった微量リチウム摂取法といえるかもしれません。身近な食品が、脳の未来を守る一助になる可能性があるのです。









