キレーション治療とは

現代医療の治療薬は、ほとんどのものが、まず初めに動物実験にて有効性と安全性を確認し、人間における臨床試験を経て実際の治療薬として利用されるというプロセスを経ています。しかし本日お話しするキレーション治療はこうしたプロセスを経ずに臨床の場で活用されている極めて珍しい治療法の一つです。

キレーションという言葉は、ギリシャ語の「キール」、すなわち「蟹のハサミ」、に由来するとされています。これはキレーション治療で使用されるキレート薬剤が、蟹のハサミのように金属と結合する様子から命名されています。

数百種類あるとされるキレート薬剤の中で、最も代表的なものがEDTA(エデト酢酸)と呼ばれるもので、1940年代に鉛中毒患者の治療薬として開発されています。その背景には、その当時の工業生産によってもたらされた環境汚染物質の一つとして鉛があったこと、また化学兵器を用いた戦争による傷病兵の治療目的のためとされています。

第2次大戦後、EDTAは米国を中心に、鉛中毒患者の治療薬として広く利用されるようになります。ちなみに現在の日本の医療においても鉛中毒患者の治療薬としてEDTAは第一選択薬として登録されています。

1950年代、心臓内科医のクラーク医師が鉛中毒患者の治療を行ったところ、その患者の既往疾病である狭心症の症状が軽快したことが認められました。クラーク医師の優れたところは、EDTAが鉛中毒の治療だけでなく、心臓血管疾患にも有効ではないかと考え、その後様々な臨床試験を繰りかえし行ない、この治療が狭心症などの心臓血管疾患に対して有効であることを論文で発表したことでした。

しかし、この治療法が正規の治療として認められるまでには、実に半世紀ほどの長い時間がかかることになります。次回は、キレーション治療が認められるまでの経緯について述べたいと思います。

<<お知らせ>>
11月5、6日に、第18回キレーション治療セミナーを行います。初日は基礎コースとしてキレーション治療の実際についてお話します。二日目は応用編として5名の先生方から最新医療情報についてお話しいただきます。今年は恩師であるテリー・グロスマン先生にもご登場頂きます。参加者は医療関係者に限られますが、参加ご希望の方は下記より登録をいただければ幸いです。詳細は下記をご覧ください。

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