先週に引き続き、第17回 キレーション治療セミナーの講演内容のダイジェストをお届けします。
本日のテーマは、「非視覚系オプシンによる健康イノベーション」についてです。
講師の坪田一男先生は、今年の春に慶應大学眼科学教室の教授を退官され、ベンチャー企業として株式会社坪田ラボの責任者として最新の研究分野とビジネスの世界を繋ぐ新たな挑戦を始められています。
坪田先生は慶應大学時代、自然光に含まれる紫色の光線(Violet Light; VL) が近視を予防することを世界に先駆けて発見されました。その後、VLには脳の血流を増加させる働きがあることも確認され、現在ではVLを利用した脳機能の維持改善作用目的の医療機器の開発に取り組まれています。
演題名にあるオプシンとは、光を感知する時に機能するタンパク質でできた構造体のことです。光を感知するためのオプシンが、実は眼球以外の身体の細胞にも存在することが明らかにされています。これは発生学的な視点からすると興味深いことですが、生命体が進化の過程で眼球を持つようになるのは、極めて遅い段階であり、それまでの生命体は眼球なしで光を感知しながら生きてきたということです。このため生命体は光のエネルギーを皮膚など眼球以外の器官でも利用できる仕組みを保持するようになったようです。
こうした研究成果から、坪田先生が懸念されていることは、新型コロナによるステイホーム現象です。ステイホームでは、自然光に当たる時間が減少しますので、自然光による健康増進効果が得られなくなってしまいます。具体的には、子供の近視が増える、成人の認知機能が低下する、うつ病患者が増えるなどという、ありがたくない現象が起きてしまいます。
屋外で自然光を浴びることのメリットは、下に示すように生活習慣病予防の助けにもなります。
- 発がん率低下
- うつ病予防
- 認知力改善
- 高血圧予防
- 糖尿病予防
- 睡眠の質の改善
- ビタミンDの増加
- 近視の予防
冬の季節は自然光に浴びる時間が低下しやすい時期でもありますが、天気の良い日には短時間でも良いので、日に当たることを心がけたいものです。ちなみに、ゴルファーの平均寿命が5歳長いという論文は以前のブログでご紹介しました。この原因として、ゴルフはスポーツの中で最も自然光を浴びる時間が長いものであるからとする説があります。ゴルフ好きの方にとっては朗報と言えそうです。