動脈硬化とは、動脈の壁が変性して固くなってしまう現象です。さらに進行すれば、壁が破れて出血するか、壁にできた血栓で血管が詰まるか、何れにせよ深刻な問題がおきてしまいます。私が医学生であった頃には、動脈硬化を治す方法など無いと教えられたものですが、現在であればキレーション治療によって動脈硬化の改善を図ることができることを知っています。
キレーション治療とは、EDTAと呼ばれる合成のアミノ酸をビタミン、ミネラル類と共に繰り返し点滴をする治療です。EDTAには、鉛やカドミウムなどの有害金属の排泄を促す効果があり、動脈硬化の進行を抑えるだけでなく、一度硬くなった血管壁の弾力性をある程度戻す働きがあります。わかりやすく言えば、全身の血管の若返りが可能となるのがキレーション治療です。
キレーション治療の歴史は古く、約70年前に遡ります。1950年代、米国の心臓内科医であったクラーク医師が鉛中毒患者の治療としてEDTAを投与したところ、この患者が持っていた狭心症の症状が改善したことから、EDTAを点滴することで心臓血管疾患に効果があるのではないかと考えられるようになりました。
その後の10数年は、キレーション治療を安全でかつ効果的に行うための試行錯誤の期間であったようです。過剰投与や急速点滴投与によって、腎臓の障害が起きてしまったことも、数件ですがあったようです。しかし臨床医師たちの治療に対する情熱によって、キレーション治療についてのプロトコルが1973年に完成し、研究会も設立されました。これが現在のACAM (acam.org) の前身にあたります。
この段階でキレーション治療が、心臓血管疾患の治療法や予防法として、米国医学会に広く受け入れられたかというと、全く反対の状況でした。むしろ偽物医療だという非難に晒されたと言っても過言ではありません。当時は、外科手術や医薬品治療に頼る西洋医学が絶対的なものだという時代背景があったからです。
しかし、21世紀に入ると風向きが変わってきます。2003年から約10年間をかけて臨床試験が行われた結果、キレーション治療には、心筋梗塞再発予防効果があることが確認され、一流雑誌の論文として公表されました。キレーション治療の研究会が立ち上がってから40年後のことです。医学の世界では、パラダイムシフトが起きるまで40年はかかるとされています。キレーション治療も正当な医療と認められるために、まさに40年という歳月がかかったわけです。
今週末の日曜日、10月17日に、キレーション治療についての1時間ほどのWeb講演を行います。ご都合のよろしい方は是非ともご参加ください。