高齢者におけるマルチビタミン・ミネラルの効用

加齢に伴い、食事摂取量の減少に加えて消化吸収の障害が起きるために、高齢者の必須栄養素の低下は起こりやすいものです。中でも現代人に不足しがちな栄養素といわれる、ビタミンD、マグネシウム、そして亜鉛の3つの栄養素は、高齢者で不足することが多いものです。

オレゴン州立大学は、高齢者が栄養サプリメントとしてマルチビタミン・ミネラル(MVM)を摂取すると、どのような効用があるかについて調べています。対象は年齢が55〜75歳の男女42名。無作為にMVM摂取群と対照群に分けて12週間後に経過観察を行ない、栄養素の血中濃度のほか、以下のような項目について、その変化を調べています。

(1)血中ミネラルとビタミンの血中濃度(ビタミンC、亜鉛、ビタミンD)
(2)免疫機能(全血殺菌能活性、好中球食作用活性、活性酸素産生量)
(3)免疫状態(唾液IgAおよび血漿サイトカイン/ケモカインレベル)
(4)自己申告による健康状態の評価

その結果は、以下のグラフに示すように、血中ビタミンDの上昇はありませんでしたが、ビタミンCと亜鉛の上昇が顕著に見られました。ビタミンCはほぼ倍に、亜鉛も100μg/dL以上にまで上昇しています。

Nutrients 202012(8), 2447

対照群と比較して、免疫機能についての顕著な変化は、MVM摂取群ではみられませんでしたが、自己申告による、体調不良の日数は、対照群で6.4日であったのに対して、MVM群では2.3日と大幅に少なくなっていることがわかりました。

この研究では、MVM摂取によってビタミンCと亜鉛の血中濃度が顕著に上昇することが確認されています。一方ビタミンDについては、対象者のビタミンD濃度が25 ng/ml以上という条件がありましたので、MVMに含まれる400 IUという少量のビタミンDでは、血中濃度の変化が起きないことは当然と言えます。

免疫機能検査に有意差がみられなかったことは、免疫機能評価の難しさを示しているかもしれません。しかし体調不良を訴えた日数が顕著に低下したことは、MVMを摂取することが有益であることを示唆していると思います。秋の新型コロナに対する準備として、栄養状態の底上げをお勧めします。

The Effect of a Multivitamin and Mineral Supplement on Immune Function in Healthy Older Adults: A Double-Blind, Randomized, Controlled Trial.
Nutrients 202012(8), 2447; https://doi.org/10.3390/nu12082447

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