COVID-19とコレステロール値

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)患者について調べたところ、血液中のコレステロー値が低いほど、患者の重症度が高くなることが報告されています。

この研究は、2020年2月1日から3月3日の期間、中国の武漢の病院に、COVID-19の診断で入院した597名について調べています。データの比較検討のために、年齢や性別構成が同一になるような健常者50名を対照群として選んでいます。その結果は、上のグラフのように、COVID-19感染症の重症度が上がるにつれて、総コレステロール値、悪玉コレステロール(LDL)値が下がる傾向がみられました。善玉コレステロール(HDL)については、最重症の患者群でのみ低下する傾向がみられました。

コレステロール値の低下は、肝機能障害や低栄養状態、そして医薬品の服用時などにおきる比較的めずらしい病態です。総コレステロール値の正常値は、200±20 mg/dL ですので、本研究の対照群のコレステロール値は比較的低いものです。一方CVOID-19感染患者のコレステロール値をみると、総コレステロールの平均値が170mg/dL程度と、さらに低い傾向が見られ、この傾向は重症度が増すにつれていっそう低下していることがわかります。

LDLのはたらきは、過去のブログ記事でも述べたように、肝臓から全身の末梢組織へ、細胞修復のために必要な栄養素であるコレステロールを運ぶことにあります。LDLがなんらかの理由で低いということは、組織修復機能が低下している可能性を示唆しています。コレステロールには、下記のような重要な働きがありますので、低下や欠乏状態では免疫機能など身体の正常な機能は障害されてしまいます。

コレステロールの働き
・細胞膜の構成成分
・神経細胞の機能を維持
・ビタミンDや性ホルモンなどの原料
・胆汁を作るための原料

今回の研究結果は、コレステロール値が低いとCOVID-19が重症化しやすいのか、COVID-19が重症化したためにコレステロールが下がったのか、コレステロール値の変化が原因と結果のいずれかであるかについての検証がされていません。しかし、採血を行なった時期が入院時であることから、COVID-19の重症化に伴ってコレステロール値が下がったと考えるよりも、コレステロール値が低いためにCOVID-19が重症化したと考える方が自然です。

https://doi.org/10.1016/j.jacl.2020.04.008

つい先日も、LDLを下げる治療には、心臓血管疾患やそれに伴う死亡に対する予防効果がなかったという、衝撃的な論文が公開されています(下図参照)。悪玉コレステロールと命名され、長い間悪者扱いされてきたLDLですが、ようやくその働きについて正しく理解されるようになってきたのかもしれません。コレステロールを下げる治療を受けている方は、慎重な対応をされることをおすすめします。

Medical Tribune 2020.08.20
https://bit.ly/2EjExxA
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