Blue Zones 1.0から2.0へ

「ブルーゾーン(Blue Zones)」とは、百歳を超えても元気に暮らす人が多い地域を指します。沖縄、イタリア・サルデーニャ島、ギリシャ・イカリア島、コスタリカ・ニコヤ半島などが代表例で、これらの地域を世界に紹介したのが 米国の探検家、作家のDan Buettner (ダン・ビュトナー)です。植物中心の食事、日常的な身体活動、家族や地域とのつながり、生きがい、過度なストレスの少なさ。これらは、地域の歴史や文化の中で自然に形成された長寿の条件であり、ここでは「Blue Zone 1.0」と呼ぶことができます。

しかし、このBlue Zone 1.0には限界があります。これらは偶然と文化の積み重ねによって生まれたもので、現代の都市生活でそのまま再現することは困難です。実際、かつて世界一の長寿地域とされた沖縄でも、食の欧米化や車社会の進行により、若年層の肥満や生活習慣病が増えています。長寿は観察するだけでは維持できない時代に入ったのです。

そこで注目されるのが Blue Zone 2.0 という考え方です。これは、長寿地域を真似るのではなく、現代社会でも自然に健康になれるよう環境そのものを設計するという発想です。運動を「頑張る」のではなく歩かざるを得ない街にする。健康的な食事を無理して摂取するのではなく選びやすくする。人とのつながりを努力で保つのではなく、孤立しにくい仕組みを用意する。努力や頑張りに頼らないことが最大の特徴です。

このBlue Zone 2.0を、国家レベルで体現している代表例が Singapore です。シンガポールは伝統的な長寿地域ではありませんが、徒歩と公共交通を前提とした都市設計、多世代が共に暮らす公営住宅、比較的加工度の低いホーカーセンター文化、国主導の健康食品表示制度などにより、意識しなくても健康行動が増える社会を実現しています。これは、文化に頼らず「設計」で健康をつくるBlue Zone 2.0の現実解と言えるでしょう。

Blue Zone 1.0が「自然に生まれた長寿」だとすれば、Blue Zone 2.0は「計画的につくられる長寿」です。そして日本は、和食文化、歩行中心の生活、社会的つながりといった1.0の資産を今なお多く残しています。そこにシンガポール型の2.0の視点を重ねることで、日本は世界に先駆けた次世代の長寿モデルになり得ます。長生きは努力の結果ではなく、環境設計の結果。今後の日本社会の方向性を示す指針とも言えるものが、Blue Zone 2.0です。

Steven N Austad et al, The validity of Blue Zones demography: a response to critiques, The Gerontologist (2025). DOI: 10.1093/geront/gnaf246

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