BMIだけでは健康リスクはわからない?

—体重よりも大切な「脂肪のつき方」に注目を—

健康診断でよく耳にする「BMI:Body Mass Index(体格指数)」。
これは、体重と身長から肥満の程度を示す指標で、次の式で求められます。

BMI=体重(kg) ÷ [身長(m) × 身長(m)]

たとえば、身長1.7m・体重68kgの人の場合、
BMI=68 ÷ (1.7×1.7)=約23.5。
一般的な基準では、18.5〜24.9が「標準」、25以上が「肥満」とされています。

しかし、最近の研究では「BMIだけでは本当の健康リスクを判断できない」ことがわかってきました。
米国テキサス大学ヒューストン校の研究チームによると、BMIが正常範囲でも体内に過剰な脂肪がある人は、糖尿病や心臓病などの「心代謝疾患」にかかるリスクが高いといいます。つまり「見た目はスリムでも、体の中は肥満」というケースが少なくないのです。

研究では、テキサス州の約1,400人を対象に、BMIだけでなくウエスト周囲径(お腹まわり)や体脂肪量も測定。その結果、BMIが「標準」と判定された人のうち半数以上が体脂肪過多と診断されました。特にお腹まわりに脂肪が多い人ほど、血糖値・血圧・コレステロール値が高く、代謝異常を起こしやすい傾向が見られました。

研究者たちは、「心代謝疾患の予防には、BMIだけでなく**脂肪のつき方(分布)**を評価することが重要」と指摘しています。
目安として、男性のウエストが102cm以上、女性が88cm以上であれば、内臓脂肪が多く代謝異常のリスクが高いとされています。

BMIが25未満でも油断は禁物です。運動不足や加齢によって筋肉が減り脂肪が増える「隠れ肥満」は、見た目以上に危険な状態です。鏡に映る姿だけでなく、ウエスト周囲や体脂肪率にも注意を払いましょう。

体重の数字にとらわれず、「脂肪の質と場所」に目を向ける。それこそが、これからの時代の“健康管理の新常識”といえるでしょう。

 Alexandra B. Palmer et al, Excess Adiposity Without Obesity in a High-Risk Population, JAMA Network Open (2025). DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2025.35194

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