創造的な体験が脳を若く保つ――国際研究が示す「脳のアンチエイジング」効果
音楽を奏でる、絵を描く、踊る、あるいはビデオゲームを楽しむ——こうした創造的な体験が、脳の老化を遅らせる可能性があることが、国際共同研究で明らかになりました。トリニティ・カレッジ・ダブリンを含む世界13か国の研究チームは、1,400人以上を対象に脳活動を測定し、創造性と「脳年齢」の関係を分析しました。
研究では、脳波や脳磁図(EEG/MEG)によって得られたデータを用い、「脳クロック」と呼ばれるモデルで各人の脳年齢を推定しました。これは実年齢と比較して脳の老化がどの程度進んでいるか、あるいは遅れているかを示すものです。その結果、音楽家やダンサー、画家、ゲーム愛好家など、創造的活動に関わる人々は、平均して脳年齢が実年齢よりも若い傾向を示しました。さらに、専門家レベルの高い人ほど脳年齢の遅れが大きく、短期間の学習や練習でも効果が見られたといいます。
この「脳の若返り効果」は、記憶や判断、感情を司る脳の中枢部位で特に顕著でした。創造的な活動によって脳内ネットワークの結びつきが強まり、情報処理の効率が高まることが確認されたのです。研究者たちは、こうした神経可塑性(脳の柔軟な変化能力)が、老化や神経疾患に対する保護的な役割を果たしていると考えています。
研究代表者のイバニェス教授は、「創造性は運動や食事と同じくらい、脳の健康を守る力がある」と述べています。創造性は芸術家や専門家だけのものではありません。楽器を始めてみる、ダンスを習う、趣味で絵を描く、ゲームで戦略を練る——どんな形であっても、脳を活性化し、若さを保つきっかけになります。
日々の生活に少しの創造的時間を取り入れること。それが、脳のアンチエイジングにつながる第一歩かもしれません。