がん治療後、再発の不安や体力の低下に悩む方は少なくありません。しかし、そんな方々にとって明るい研究成果が発表されました。カナダやアメリカ、オーストラリアなど5か国で実施された国際共同研究により、「大腸がん治療後に運動を習慣化することで、再発のリスクを減らし、寿命を延ばす可能性がある」という結果が報告されたのです。
この研究では、切除手術と化学療法を終えた大腸がん患者889名を対象に、3年間にわたる運動プログラムを実施したグループと、健康に関する資料の提供だけを受けたグループで比較が行われました。
その結果、運動を継続したグループでは「再発せずに生存している期間(無病生存期間)」が有意に長く、5年後の再発なしの割合は80.3%に達しました(資料提供のみのグループは73.9%)。さらに、8年後の全体の生存率も90.3%と、運動をしなかったグループの83.2%を大きく上回りました。
これは、再発予防の薬剤に匹敵するほどの効果であり、がん治療の「第4の柱」として運動が注目される時代が来ているとも言えます。
もちろん、運動に伴って軽度の筋肉や関節の痛みなどが出ることも報告されていますが、それでも命を守る力があるなら、運動を生活に取り入れる価値は十分にあるでしょう。研究者らは、今後、がんセンターや保険制度が「がん治療後の運動指導」を正式に治療の一部として導入すべきだと提言しています。
これまで「運動は体に良い」と言われてきましたが、今回の研究はそれをがん治療後の“科学的エビデンス”として証明した初の大規模な無作為化試験です。がんを克服した後も健康に生きるために、ウォーキングや軽い筋トレなど、自分の体力に合った運動を習慣とすることをお勧めします。