スマートフォンやパソコンを使う時間が増えた現代。つい長時間座りっぱなしで過ごしてしまう人も多いのではないでしょうか?最近の研究では、こうした「座りすぎの生活習慣(セデンタリー行動)」が、アルツハイマー病(AD)のリスクを高める可能性があることがわかってきました。
アメリカ・ヴァンダービルト大学の研究チームは、60代以上の高齢者404人を対象に、7年間にわたって追跡調査を行いました。参加者は、1週間の活動量を腕時計型のセンサーで測定し、MRIによる脳の検査や記憶・認知機能のテストも定期的に受けました。
その結果、座っている時間が長い人ほど、脳の萎縮が進みやすく、記憶力や思考スピードが低下しやすいことが明らかになりました。具体的には、アルツハイマー病の早期に見られる「AD-脳画像サイン」が小さくなり、海馬という記憶に重要な脳の部位の体積がより速く減少していたのです。
さらに、「名前が思い出せない」「話すのに時間がかかる」といった言語能力や情報処理速度の低下も確認されました。驚くべきことに、これらの変化は単に加齢の影響だけでなく、「座っている時間の長さ」と明確に関係していたのです。
また、アルツハイマー病のリスクを高める遺伝子である「APOE-ε4」を持つ人では、この影響がさらに強く出ていました。つまり、遺伝的リスクがある人ほど、日常生活での“動かなさ”が脳に与える悪影響が大きくなることが示唆されています。
この研究は、単なる「運動不足」ではなく、「座り続けていること自体」が脳の健康に悪影響を及ぼすという新たな視点を提示しています。
では、私たちはどうすればよいのでしょうか?
答えはシンプルです。こまめに体を動かすことです。
長時間座ることを避け、1時間に1回は立ち上がって歩いたり、軽くストレッチをする習慣をつけましょう。日常生活の中で少しずつ動きを増やすだけでも、脳の健康を守る第一歩になります。特に、認知症に不安を抱えている方や、ご家族にその既往がある方は、今日から「座りっぱなしを減らす生活」を意識してみてください。
脳を守るには、高価な薬や特別な運動よりも、日々の小さな行動の積み重ねが鍵になります。