運動と脳機能

脳の老化を防ぐには、「心肺フィットネス」がカギかもしれません

心肺フィットネス(CRF)が高い人は、加齢による脳の変化――たとえば大脳皮質の薄まりや、灰白質(脳の情報処理に関わる部分)の萎縮――が少ないことがわかっています。最新の研究では、酸素を取り込む力(最大酸素摂取量:Vo₂peak)で測ったCRFが、脳の構造や認知機能にどのような影響を与えるかを、全年齢の大人を対象に調べました。

対象となったのは、普段あまり運動をしていない健康な成人172名(女性65%、年齢22〜81歳)。トレッドミル(ランニングマシン)でCRFを測定し、MRI検査で脳の構造を確認。そして記憶力や判断力といった“流動性認知機能”を評価するテストも行いました。

その結果、加齢とともに脳の皮質は薄くなり、灰白質の量も減る傾向が見られました。一方で、CRF(Vo₂peak)の高さだけでは脳の厚さや灰白質の量とは直接の関係は見られませんでした。

しかし、年齢とCRFの「組み合わせ」には注目すべき結果がありました。心肺フィットネスが低い人ほど、年齢とともに右上頭頂葉という脳の一部の体積が減っていく一方、CRFが高い人ではそのような変化が見られなかったのです。また、この右上頭頂葉の体積が大きいほど、記憶力や思考力といった認知機能も高い傾向があることが示されました。

つまり、年齢を重ねても脳の健康を保ち、認知機能を維持するには、日頃から心肺機能を高めておくことが大切だと考えられます。適度な運動習慣を身につけることが、脳の老化を防ぐ一歩になるかもしれません。

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