制酸剤(PPI)と認知症

逆流性食道炎の治療薬として、臨床的に汎用されている制酸剤の代表がPPI製剤です。PPI(proton pum inhibitor)は、胃酸の分泌を抑制する効果的な医薬品ですが、その副作用についての報告も多々あります。最新の研究では、PPIの使用が認知症リスクを増加させることが報告されています。

この研究は、2000年から2018年にかけて、60〜75歳の約200万人を対象としたデンマークの疫学研究です。調査期間中に、約1万人が認知症を発症しています。認知症を発症した群と発症しなかった群に分けてPPI使用について調べたところ、以下のような結果になりました。

60代では、PPI服用による認知症発症リスクが、非服用者と比べて1.36倍と高い傾向がみられた。

この結果から、比較的年齢層の若い60代にPPIの服用を行なっていると認知症リスクが増加する傾向がみられています。またPPI服用期間が長いほど認知症になるリスクも高くなることがわかりました。

胃酸には次のような重要な働きがあります。

  1. 傾向的に侵入した、異物や雑菌の消毒、殺菌作用。
  2. タンパク質の消化吸収。
  3. ミネラルの吸収をサポート。

PPIを長期に服用することは、これらの胃酸の働きを抑制してしまうことになり、雑菌の体内への侵入を容易にしてしまうことやアミノ酸やミネラルといった人体にとって必要な栄養成分の欠乏を招くことになります。さらに懸念されることは、腸脳相関という言葉の示すように、胃腸の状態と脳神経機能との間には密接な関係があることが知られていますので、PPI服用によって直接的に脳への影響がある可能性です。

PPIは逆流性食道炎の症状を軽快させることができる優れた医薬品です。しかし安易な使用は様々な副作用を引き起こすことにもなります。その使い方については担当医のアドバイスを尊重されてください。

PPIに分類される代表的な医薬品名称は以下のようなものです。
オメプラール 、オメプラゾン、タケプロン、パリエット、ネキシウム、タケキャブ etc.

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