白隠禅師と「健康」

「健康」という言葉は、私たちが日常的に使っている言葉ですが、その由来は意外にも新しいもので、江戸時代に活躍した白隠禅師(1689-1769)が初めて使用したとされています。(日本医史学雑誌 第 62 巻第 2 号) ちなみに、中国では「康健」という言葉が、日本語でいう「健康」にあたる言葉として使われていることも興味深いことです。

白隠禅師は20代半ばの頃、過酷な修行のためか、現代で言うところのノイローゼのような状態になり、結核まで罹ってしまいました。様々な治療を試みましたが、なかなか良くならず、諸国を彷徨った末に京都の白幽という賢人の指導を受け、健康を取り戻したと言われています。その後、白隠禅師は84歳で亡くなるまで、臨済宗の中興の祖として精力的に活動を続けました。

その体験談を白隠禅師は晩年に「夜船閑話」という書物に残しておられます。白隠禅師が健康を取り戻した方法の大きな柱が呼吸法にあったとされています。詳しくは「夜船閑話」に記載されていますが、丹田呼吸と内観法ということになると思います。これらの方法を日常の習慣とすることが、大きな活力の源となるとされています。

呼吸は人間が生きている証でもあり、普段から無意識のうちに行っている生命活動の一つです。コロナ禍でマスクの普及もあり、深い呼吸をすることを忘れてしまっている方も多いように思われます。丹田呼吸や腹式呼吸に至っては、その存在すら知らないという方も多いのではないでしょうか。

深い呼吸をして、気を全身にめぐらせるという発想は、東洋医学の叡智に基づいています。自分に合った方法で良いので、普段の生活の中で深い呼吸をするように心がけることは健康法の基本です。

前述した白隠禅師は、生前数多くの書画を残しました。これらのオリジナルは美術館や寺院の倉庫に眠っており、一般にはあまり公開されていません。しかし、ありがたいことに、これらの作品を現代のIT技術を用いて復刻した展示会が、9月に相模原市で開催される予定です。興味のある方は、ぜひ足を運んでご覧になってみてください。詳細を以下に添付します。

パンフレット原本はこちらからご覧いただけます。
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