制酸剤 (PPI)と肝がん

逆流性食道炎という病名もかなり一般的になって来ました。食後にすぐに横になったりすることで、食道へ逆流した胃酸の刺激によって痛みが生じます。ピロリ菌の除菌が広く行われるようになったことも、逆流性食道炎を増やしていることの一つの原因です。

治療としては、症状の原因を作っている胃酸を抑える制酸剤が使われます。特にプロトンポンプ阻害薬 (PPI ;proton pump inhibitor) と呼ばれる制酸剤は効果がてきめんに現れますので、多く処方されている医薬品の一つです。ところがこのPPIには重篤な副作用があることも知られています。

以前こちらのブログで紹介した副作用はPPIを長期に服用すると胃がんの発症率が高くなるというものでした。しかし昨年報告された研究では、PPIの服用は肝がんの発症リスクを増やすということが明らかにされています。それも数パーセント増やすというものではなく、なんと80%以上も高くなるというショッキングな研究結果が報告されています。 この研究はPPIを長期投与すると肝臓がんのリスクが増えるという動物実験の結果を踏まえて行われたもので、人間を対象としたものです。

なぜPPI服用によって肝がんになるのかについては明らかにされていませんが、今後の研究成果に期待したいところです。PPIは、日本でもかなりの頻度で処方されている代表的な医薬品です。逆流性食道炎の症状が辛い場合には服用せざるを得ない場合もあります。しかし症状が軽い場合や長年にわたって定期的に服用することのリスクについては、十分に検討する必要がありそうです。

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